ぼくと世界とキミ

この村ではパンを手に入れるのにも苦労する。

植物も育ち難い土地らしく、野菜もあまり手に入らない。

男は自分の食べる分を減らしてまで、俺をここに置いてくれているんだ。

今まではその事に気付かない振りをしていた。

……自分の居場所を守るために。

……でも……

酷く痩せてしまった男の姿を見つめていると、右肩の痣が……まるで何かを訴える様にキリッと痛んだ。

その瞬間、不意に古ぼけた棚の写真に目が留まった。

そこにはさっきと変わらない優しい笑顔が俺に向けられている。

……分かっていた。

すでに傷は癒え、俺がここで立ち止まる事は許されない。

ただこの男の優しさに……甘えていただけなのだと。

……もう……ここには居られない。
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