ぼくと世界とキミ
「僕はノヴァ。お兄さん達は?」
その少年の問いにそれぞれが簡単な自己紹介すると、少年は少し驚いた様な不思議な表情を見せたが、すぐに嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ここに座ったのがロイ達で良かった。怖い人が来たらどうしようって思ってたんだ」
そう言ったノヴァの無邪気な笑顔に……なんだか和む。
「……あっ!見て!!」
ノヴァの声につられ窓の外に目をやると、世界の遥か彼方に大きな樹木が見えた。
「……世界樹か」
ジルはそう言って静かにその樹を見つめる。
ちょうど大陸の中央に生えている、天にも届きそうな程に巨大な樹木。
その周りには数千年前に栄えたとされる、古代イシュフェリア国の遺跡が残っているらしい。
そうかつて世界が一つだった頃に、人間も魔物も全てのモノが共存していた国。
「……ねぇ知ってる?世界樹には不思議な伝説があるんだって」
ノヴァはそう言うと、少しだけ切なそうに瞳を揺らして世界樹を見つめる。
「自分が《最も求めているモノ》の幻を見せてくれるんだってさ」
「求めているモノ?」
ノヴァの呟きをそのまま繰り返すと、ノヴァは『うん!うん!』と首を縦に振って見せた。
「……僕も……人から聞いた話なんだけどね」
そう言ってノヴァはどこか遠くを見る様に目を細め、それから何も言わないまま静かに外の景色を眺めていた。