ぼくと世界とキミ

「おっちゃん!俺、今日……ここを出るよ!!」

その言葉と共に精一杯の笑顔を作った。

……今度は失敗しなかった様だ。

男は驚いた様に目を見開き少し寂しそうな顔をしたが、それから深く頷いて返してくれた。

「それならば……これをお持ち下さい」

そう言って男は後ろの棚から小銭の入った小さな袋とボロボロの地図、そして……古い短剣を取ると、それをテーブルに置いた。

「外には魔物もいて危険ですし、これは私には不要の物です。お気になさらずにお使いになって下さい」

そう言って男は優しく笑う。

「これはおっちゃんが頑張って貯めてた金だろ!!それに……この剣だって……」

泥と……血で汚れた短剣。

彼の息子の……遺品だった。

「貴方に使って頂きたい。息子が命を賭けて守ろうとした……貴方だからこそ」

そう言った男の強い眼差しが、真っ直ぐに俺に向けられる。

その眼差しを一身に受けながら強く拳を握り締めると、覚悟を決める様にグッと息を呑んだ。

胸が引き裂かれる様に痛んだが……そっとその剣に手を触れる。

「……ありがとう」

そう言って最高の笑顔を浮かべて見せると、男は優しく笑って頷いてくれた。
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