ぼくと世界とキミ
ジルに気付かれない様にゆっくりと忍び足で部屋を出ると、薄暗い廊下に人の気配は無く、辺りはシンと静まり返っていた。
(……きて)
そんな静寂の中、その透き通る様な細い声はさっきよりもハッキリと俺の耳に届いた。
その声に導かれるままに階段を下りると、玉座の間に続く長い廊下に出る。
(きて)
更に声は大きく、強く聞こえ、迷う事なく玉座の間に向かって歩いて行く。
すると大きな扉の前に行き着き、そこに兵士の姿が見えた。
扉の前には兵士が二人立っているが、俺の姿に全く気付く様子がない。
恐る恐る近付いてみると、兵士は直立不動のまま目を閉じ、微かにいびきを掻いていた。
……眠ってる?
どうやら兵士達は眠っているらしい。
さっきから周りをうろちょろと動く俺の気配にも全く気付かず目を覚まさない。
……そんな事があるのだろうか。
そんな事を考えながら扉を見ると、人が一人通れる程の隙間が開いている事に気が付いた。
……ここに入れって事か?
グッと唇を噛み締め気配を殺したまま、そっと扉の隙間をくぐり抜けた。