ぼくと世界とキミ
部屋の中はやはり薄暗く、広い部屋にポツンと置いてある空席の玉座が少し不気味に見える。
ゆっくりと王座に近寄り、その近辺を探るが……どこもおかしな所は無い。
(……うしろ)
……後ろ?
聞こえた声に導かれる様に、玉座の後ろを調べてみる。
うん……どこにでもある普通の玉座だ。
俺が小さい頃は兵士達とかくれんぼをして、親父の座っている椅子の後ろに隠れたっけ。
……流石にそこまで探しにくる奴はいなかったな。
そんな遠く懐かしい記憶が蘇り、それを懐かしむ様に目を細めたまま、玉座を探る。
別に……どこもおかしな所は……
「……あ」
そう小さく声を漏らしグッと玉座に顔を寄せる。
薄暗い部屋の中、よく目を凝らして見ると、そこには……小さな穴が開いていた。
これはどうやら……《鍵穴》の様だ。
……鍵。
頭の中で小さく呟き、ポケットにしまっていた鍵を取り出す。
……メルキアの紋章が入った古い鍵。
その鍵をそっと鍵穴に差し、大きく深呼吸をしてからそれを回した。
するとカチっと錠の外れる音が静かな部屋に響き、それからゆっくりと玉座が横にスライドする。
そしてその玉座のあった場所に……階段が姿を現した。
階段の先は真っ暗で何も見えない。