ぼくと世界とキミ
ランプの淡い光を頼りに、薄暗い階段を一段一段慎重に下りて行く。
円を描く様にして続いている階段を下りきると、その先に真っ直ぐに道が続いていた。
「何があるか分らない。気を付けろ」
「……おう。……あれ?」
ジルに短く答えて返すと、目の前に灰色の壁が姿を現した。
どうやらこれで行き止まりの様だ。
……これまで歩いて来て部屋の様なものも、扉も見えなかった。
「……行き止まり?」
そう呟くと、後ろから二人の深い溜息が聞こえる。
(……とびら)
……扉?
またどこからか声が聞こえ、その声に促される様に正面の灰色の壁を見つめる。
するとザラザラとした石の壁に……二つの窪みが見えた。
それは取っ手の様に手を掛ける事が出来るらしい。
そっと取っ手に手を掛け、扉を押して見るが……扉は全く開く気配を見せない。
「……ダメだ。開かない」
はぁとため息交じりに二人を振り返り肩を竦めて見せると、ジルは無表情のままそっと取っ手を指差した。
「引き戸じゃないのか?」
ジルの冷静な声が響き、それと共に辺りにシンとした空気が広がる。
……そっか。
ポンと手を叩いて見せると、窪みに手を掛け思いっきり引いてみる。
するとズズズッと地面を擦る重たい音が聞こえ……それからゆっくりと扉が開いた。