ぼくと世界とキミ
「なに……ここ?」
そう声を漏らし、扉の先にあった不思議な《部屋》を眺める。
細長い通路の様な部屋の壁は、全て本棚になっていた。
その本棚にはとても古そうな分厚い本が、隙間無くギッシリと詰められている。
そして部屋の最奥に、二体の彫刻が立っているのが見えた。
……少年と少女の彫刻。
その少女の彫刻の両腕には、美しい細工の腕輪が嵌められている。
赤い大きな宝石が嵌められたその腕輪は、綺麗だと思うと同時に……どこか歪な禍々さを感じた。
「なんの部屋だと思う?」
「たぶん……メルキアの資料をしまってある部屋の様だな」
ジルが本棚の本を手に取りパラパラと捲りながら小さく答えた。
「メルキアの特殊文字で書かれていて全ては読めないが……おそらく歴史書といったところか」
……歴史書ね。
……本当にそれだけだろうか。
それだけのために……こんな厳重な部屋を?
そんな事を考えながらフラフラと奥へと進んで行くと、突然ゴトンと鈍い打音が聞こえた。
「……わっ!!」
驚いて勢いよく後ろを振り向くと、そこには本が一冊落ちている。
……黒い表紙の分厚い本。
そっとそれを取ると、キョロキョロと辺りの本棚を見回した。
本棚から落ちたのかと思ったが、本棚に落ちている本が入っていた様な隙間が見当たらない。
……一体……どこから。
手にした本をパラパラと捲ってみると……それはどうやら古い日記の様だった。
すでに紙が酸化しポロポロと割れてしまう上に、所々が擦れていて読めない。
しかし不意に……とあるページが目に留まった。
ジルとセリアもいつも間にか俺の横に立ち、本を覗き込んでいる。