ぼくと世界とキミ
「……こほっ!!」
「アシュリー!!」
急に聞こえた咳き込む声に、カインが慌てて《妹》の元へと掛け寄る。
「アシュリー……ごめん。僕は……僕は……」
アシュリーと呼ばれた女は何が起こったのか分らない様で、泣きながら息もできない程に抱き締めるカインに困惑した様に瞳を揺らした。
しかしそれから彼女は優しく笑うと……泣き続ける《兄》をそっと抱き締めた。
二人の腕に嵌められた腕輪の宝石は赤く光り、どうやら結界もちゃんと機能している様だった。
これで失敗してたら……俺、最低だもんな。
ホッと胸を撫で下ろし、ポリポリと頭を掻いたその時だった。
(……ありがとう)
不意に後ろから声が聞こえ、そっと後ろを振り向いた。
そこには、化けも……いや、あのおばあさんと、フロントに居たヨボヨボのおじいさんが仲良く寄り添っている。
しかし次の瞬間、二人の体が眩い光に包まれると……それは若々しい少年と少女の姿に変わった。
少女の白い腕の中には……あの《絵本》が抱かれている。
……ああ、アンタ達が俺を呼んだのか。
心の中でそう呟くと、二人がニッコリと笑った。