ぼくと世界とキミ
「……はぁ……腹減ったなぁ」
ギュルルルとまるで恐ろしい化け物の鳴き声の様な腹の音が辺りに響き渡る。
もちろん食糧など持っていないし、辺りを見回してみるが食べられそうな物は見当たらない。
……いっそこの草でも食べてみるか。
……いや、絶対に無理だ。
「……もうヤダ」
まだ半日しか経っていないというのに、もうあの村へ帰りたくなってしまった。
……我ながら諦めが早い。
「あ~あ!!」
地図を投げ出し、ゴロンと草原に寝転んだ。
草原に寝転んだまま、そっと空を仰ぐ。
空は青く澄んでいて、風が遥か遠くへと吹いて行った。
……このまま寝てしまおうか。
……もう何もしたくない。
ふと投げ出され、広げっぱなしの地図に目が留まった。
地図に描かれている楕円形の土地が……四つに割れている。
南の国セレリア。
東の国メルキア。
北の国フリーディア。
そして……西の国グレノア。
この四つの国が、この世界の全てだ。
昔は幾度も大きな争いがあった様だが、ここ数百年はどの国もお互いの領地には踏み込まず仲良くやっていた。
しかし二年前にグレノアの国王が亡くなり息子のルークが後を継いでから、絶えず争いが起こる様になった。
ルークはこの世界の全てが欲しいらしく、絶えずセレリアの領地に踏み込んできた。
ついには城まで攻められ……セレリアは壊滅。
王族は一人残らず殺され、街の住民達もほとんどが殺されてしまった。
セレリアの兵士、物資、領地など、いまでは全てグレノアのモノになってしまった。
……それが半年前の話。
「……っ!」
急に右肩がズキリと痛んだ。
「女神の祝福か……くそっ!!」
そう言って小さく舌打ちをすると、拳で強く地面を叩きつける。
セレリアの事やもう会えない皆の事を思うと……必ずこの痣が痛む。
最悪な……『勇者の証』が。