ぼくと世界とキミ
この世界にはくだらない伝説がある。
《世界の終わる時、王家に翡翠の瞳の子供が生まれる。それは女神に祝福された神の子。他王家の証を持ちし者を集め、その力を解放し、世界を救う勇者となる》
……くだらない。
……俺は勇者なんかじゃない。
世界どころか……家族すら守れなかったのだから。
たまたま瞳が翡翠色だったのとこんな痣があったせいで、みんなは俺が勇者だと信じて疑わない。
……俺には何の力も無いのに。
そんな事をボーっと考えているうちに、どうやら日が暮れてきた。
地平線が紅く染まり、徐々に世界が闇に包まれる。
……綺麗だ。
こんな世界が滅ぶ日が本当に来るのだろうか。
「……そろそろ行くか。夜は凶暴な魔物が多いしな」
そう言って身を起こすと、地図を拾い上げパンパンとズボンに付いた土を払う。
最近は凶暴な魔物が増えているらしい。
この辺りでは魔物に襲われ、廃墟になった村も少なくない。
……昔は凶暴な魔物など滅多にいなかったらしいけど。
そんな事を考え微かに嫌な予感を覚える。
「……そんな奴に出会いませんように」
そう言うと少しだけ不安になり、急ぎ足で……右に向かって歩き出した。