ぼくと世界とキミ

列車から降り駅から外に出ると、空からポツポツと冷たい雫が降り注いだ。

「……雨か」

そう小さく呟いて空を見上げると、空を黒い不気味な雲が覆い尽くしているのが見える。

その黒い空の中に、不意に白い何かが過った様な気がした。

……あれは?

目を凝らしてよく見て見ると、ヒラヒラと《白いモノ》が空を舞っている。

「……雪!?」

そう声を上げると、皆が俺と同じ様に空を見上げ、驚いた様に目を丸くする。

……雪が降っていた。

それはヒラヒラと静かに宙を舞い、灰色の地面に落ちては溶けて消える。

「そんな……」

この世界の気候は温暖で、一年を通して薄着でいても支障はない。

雪が降る場所は王都フリーディアの遥か北にある、限られた山の山頂付近に振るだけだ。

……もちろん本物など見た事は無い。

そっと辺りを見回すと、町の人々が驚いた様に空を見上げ、ヒラヒラと舞う白い粒を指差している。

その次の瞬間、突然地面が大きく揺れた。

グラグラと大地が揺れ、立っていられない程の強い揺れが続く。
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