ぼくと世界とキミ

「……ロイ」

後ろから声が聞こえ振り返ると、そこにはセリアが悲しそうな顔をして立っていた。

「ジルが呼んでるよ。会議室に来てくれって……」

そこまで言ってセリアは口を噤むと、静かに俯いてしまった。

「……セリア」

そう小さく彼女の名を呼び、そっと彼女を見つめる。

「どうして人は……争う事を止められないのかな」

セリアの擦れ消えてしまいそうな呟きに、胸が張り裂けそうになった。

「マナが……泣いているの。壊したくないと……誰も傷付けたくないと泣いているのに」

セリアはそこまで言うと次の瞬間、俺の胸に飛び込んで来た。

彼女はカタカタを体を震わせ、俺の服をギュッと握り締める。

……そっと彼女を抱き締める。

その彼女の温もりに。俺の胸がドキドキとときめく事は無く、そして頬が赤く染まる事もない。

今確かに感じるのは……往き場のない深い悲しみだけ。

「……私は……何もできない」

そのセリアの悲しい呟きが……いつまでも繰り返し頭の中に響き続けた。
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