ぼくと世界とキミ

   *

「始まったみたいだね……フィロ?」

そう言って右目に妖しい《赤》を纏った少年は、後ろに立つ女を見つめた。

銀髪の長い髪をポニーテールに縛り、キラキラと光る美しい宝飾の髪飾りをつけた女。

肌にぴったりと張り付く様な生地のブラに、尻の見えそうなミニスカートと膝上までの長いブーツ。

それは全て闇の様な黒で染まり、それとは対照的な白い肌が引き立っている。

「これから私はフリーディア城に向かう。ノヴァ、貴方は……」

「勇者を殺せばいいんでしょ?」

女の言葉を遮り少年はそう答えると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

「……気を付けて」

そう言って女は少年の頬にそっと手を触れると、少し切なそうに瞳を揺らす。

「フィロもね?」

少年のその言葉に女は優しく微笑むと、空に向かって口笛を吹いた。

するとどこから現れたのか……空は大きな羽を広げた不気味な黒い影達に埋め尽くされる。

それは妖しい赤い瞳を闇に光らせ、これから襲う事になる獲物達を静かに見つめていた。

その中から降りて来た二つの影に二人はそれぞれ乗り込むと、小さく頷き合い……目的の場所へと向かって飛び立った。
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