ぼくと世界とキミ
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振り注ぐ激しい雨の中、向かって来る《敵》を切っては倒す。
崩れ落ちた《敵》の体が泥水を跳ね上げ、一瞬視界が鈍る。
するとすぐに後ろから気配を感じ、振り向き様に剣を突き立てた。
口から赤い鮮血を吐き地面に倒れる《敵》の姿と共に辺りを見回し、小さく舌打ちをする。
辺りは混戦状態で、皆が跳ね上げる泥水のせいで《敵》か《味方》かも判別し難い。
視界が晴れず敵の数も全く減る様子が無く……一向に埒があかない。
「アシュリー!!生きてるか!?」
「縁起の悪い事、言わないで下さい!!」
俺のその呼び掛けに、思ったよりも近くから彼女の声が聞こえた。
その声の方へと視線を向けると、アシュリーが敵に向かって弓を絞っている姿が見える。
弓は不思議な白い光を纏い、そして絞られた矢の先に、燃える様な赤い炎が揺らめいていた。
その矢は弓を離れ、真っ直ぐに《敵》の体目掛け飛んでいく。
そしてそれが剣を振り上げた《敵》に突き刺さったその瞬間、《敵》は激しい炎に包まれ、ドサリとその場に崩れ落ちた。
彼女が無事だった事に少し安堵しホッ息を吐くと、雨の降り注ぐ空を見上げた。
雨を落とす黒い雲の渦の中に、《何か》が過った様に見えた。
よく目を凝らして見ると、それは……夥しい数の《魔物》だった。
「……くそっ!!魔物か!!」
数え切れない程の魔物は赤い不気味な瞳を光らせ、フリーディアに向かって真っ直ぐに飛んで行く。
その最悪な光景を茫然と見上げたまま立ち尽くしていると、隊列から離れる様に一匹の魔物がこちらに向かって降りてくるのが見えた。
大きな翼を広げたその背に……誰か《人間》が乗っている様だ。
魔物が凄い速さで俺の目の前に降り立つと、その背に乗っていた《少年》は俺を見つめ……ニッコリと無邪気な笑みを浮かべた。