ぼくと世界とキミ
「お前は……ノヴァ!?」
驚いた様に声を漏らし、困惑したまま目の前の少年を見つめる。
そう……スカイトレインで一緒になった、あの《少年》
「久しぶりだね、ジル。ここにロイは居ないの?」
ノヴァはそう言って小さく手を上げると、キョロキョロとワザとらしく周りを見回した。
「な、なぜ……お前が!?」
その自分の問い掛けと共に、瞬く間にある《答え》が浮かび上がる。
コイツが……魔物を操る奴だって言うのか?
コイツが……ライラの村を襲った……
「……ジル!!」
そのアシュリーの叫びに後ろを振り向くと、グレノア兵が高々と剣を振り上げる姿が映った。
「……しまっ……」
防御する事も避ける事も出来ず大きく目を見開いたその次の瞬間……兵士は激しい炎に包まれると姿を消した。
「よそ見してたら危ないよ?」
そう言ってノヴァはケラケラと無邪気に笑った。
どうやらさっきの炎はコイツの乗っている魔物が吐いた炎らしい。
大きな鳥の様な魔物の嘴(くちばし)の隙間から、灰色の煙が燻ぶっているのが見えた。
「お前、仲間を……」
「こんな奴、仲間なんかじゃないよ。それよりもロイはここには居ないの?」
振るえる俺の言葉を遮りノヴァはそう答えると、赤い瞳を妖しく光らせる。
何も答えないまま鋭い視線を返すと、ノヴァは一人で納得したかの様に「うんうん」と頷いた。
「ここには居ないみたいだね。じゃあ……お城かな?」
ノヴァがそれだけ言うと魔物は大きく翼を広げ、ノヴァを背に乗せたまま空高く舞い上がった。
「……待て!!」
その俺の叫びを無視して、ノヴァを乗せた魔物はバサバサと翼を羽ばたかせ……黒い空の彼方に消えて行った。
「……くそっ!!全軍撤退!!直ちにフリーディアに戻る!!」
その叫びに兵士達は戦いを続けながら、少しずつ後退を始める。
……ノヴァが敵だったなんて。
……最悪だ。
……ロイは必ず迷う。
知った顔の……しかも《子供》のノヴァを、あの《お人好し》が殺せるとは思えない。
「行くぞ!アシュリー!!」
その俺の叫びにアシュリーが頷くと、二人で馬に跨り、そのままフリーディアに向けて走り出した。