ぼくと世界とキミ
第二十五話 甘さと優しさ
「ロイ様!!フリーディア上空に無数の魔物が!!」
その兵士の報告を受け、慌てて城の屋上へと向かった。
勢いよく階段を駆け上がり扉を開け屋上に飛び出すと……そこには数え切れない程の魔物がいた。
空を覆い尽くす……不気味な黒い影。
それはすでにこの町全体を取り囲む様に飛んでいた。
「直ちに戦闘態勢を取れ!!住民には家に入る様に伝え、子供、女性、老人から優先的に城に避難させろ!!」
その俺の叫びに従い、兵士達が足早に動き出す。
慌ただしく兵士達が去ると、もう一度黒い空を見上げた。
「……女?」
まるでこちらの様子を窺う様に、城の真上をクルクルと旋回しながら飛んでいる魔物の背に《女》の姿が見える。
銀色の長い髪を風に靡かせ、白いしなやかな手がそっと空に向かって掲げられその次の瞬間……その黒尽くめの女が手を振り下ろすと、魔物達が城下町に向かい急降下を始めた。
「……くそっ!!」
小さく舌打ちをして身を翻すと、真っ直ぐにセリアの部屋を目指した。