ぼくと世界とキミ
階段を急いで駆け上がり屋上に出ると、町中から叫び声が聞こえて来た。
……急がなくては!!
その誰かの悲鳴に急かされる様に、手にした石を空に向かって高く掲げる。
するとその石が空に浮かび上がり眩く光ったかと思うと、その翡翠の光はフリーディアを全体を包み込む様に広がっっていった。
「頼む!!上手くいってくれ!!」
その俺の叫びに応える様に、翡翠の光はフリーディアを覆い尽くすと、一際眩い光を放つ。
そして町を取り囲む様に、不思議な光の壁が姿を現した。
その光の壁は降下を続ける魔物を弾き飛ばし、魔物達の侵入を拒む。
……メルキアの結界の簡易版だ。
ジルがこの城を出てすぐに、セリアと俺の力を小さな石に送り続けた。
所詮は子供だましの結界……いつまで持つかは分からない。
「とにかく中に入った魔物を何とかしよう!!」
そう言ってセリアと一緒に急いで階段を下りようとした……その時だった。
ストンと何かが地面に降りる音が聞こえ、走る足を止めた。
その正体に背を向けたまま……どうしようもない不穏な気配を感じる。
それから恐る恐る後ろを振り向くと、そこには……赤い右目を妖しく光らせながら薄ら笑う《少年》の姿があった。