ぼくと世界とキミ
ザシュッと肉に何かが突き刺さる嫌な音と共に、俺の頬に温かな何かが掛った。
「帰ってくるの……早いね?」
そう言って笑ったノヴァの右腕に、蒼い光を放つ《剣》が突き刺さっている。
そっと後ろを振り向くと、そこには……息を切らせたジルが立っていた。
「まいったなぁ」
ノヴァはそう言って自らの腕に刺さった剣を無造作に引き抜くと、それを地面に投げ捨てる。
剣の抜かれたノヴァの腕からはドクドクと吹き出す様に血が流れ、それは瞬く間に地面を赤く染めて行った。
「……ジル」
痛む左肩を押さえたままジルを見つめると、ジルは俺に向かって小さく頷いた。
「とりあえずこれを何とかしないとね」
ノヴァは空に浮かぶ緑の不思議な石を見つめたままそう呟くと、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「……待て!!」
その俺の叫びと同時にノヴァが地面を蹴り宙に浮かんだかと思うと、ノヴァの手にした黒い鎌は……その結界の《石》を粉砕した。
砕けた《石》の欠片がキラキラと切なく光り、そして消えて行く。
それと同時にフリーディアの結界が解かれ、空の魔物達がまた急降下を始めた。
その様子をノヴァは見上げてクスクスと満足そうに笑うと、情けなく地面に蹲ったままの俺を見つめる。
「さぁ……パーティーの始まりだよ?」
そのノヴァの呟きと共に、更なる悲鳴が辺りを包んだ。