ぼくと世界とキミ
「やめろ!!」
そう叫び重い体を引き摺る様に歩くと、ノヴァとジルの間に立ちはだかった。
「……どけ」
ジルはそう短く呟くと、凍り付く様に冷たい瞳で俺を睨む。
「もう決着はついただろ!!それにまだ……子供じゃないか!!」
「……どけ!!」
そう声を荒げたジルに突き飛ばされ、怪我をした左肩を地面に強打し低く呻く。
ズキズキと痛む肩を押さえたまま体を起こし、瞳を揺らしたままジルを見つめる。
「決着がついた?子供だから?……ふざけるな!!」
ジルはそう叫ぶと、片手で顔を覆ったまま嘲笑を浮かべた。
「これは戦争なんだぞ?殺さなければ殺される戦争なんだ!!そしてコイツは俺達の《敵》だ!!今殺さなければ、コイツはまた人間を殺す!!誰かの《大切な何か》を奪っていくんだ!!それが分っているのか!?」
「……でも!!」
「お前は甘すぎる!!その甘さのせいで、何一つ守る事ができないと、まだ気付かないのか!?」
そう叫んだジルの憎悪に駆られた瞳が、真っ直ぐにノヴァに向けられる。
「コイツはもう変わらない!!ここで見逃しても……コイツは必ず、またフリーディアを襲う!!」
ジルはそう言うと、剣の切先を真っ直ぐにノヴァへと向けた。
「でも……俺は……」
「本当に……ロイは優しいね」
俺の言葉を遮る様に、地面に蹲るノヴァが擦れた声で呟く。
降り注ぐ冷たい雨が彼の流す赤い血を滲ませ、そして流していく。
そんな悲しい少年の姿を茫然と見つめていると、ノヴァは真っ直ぐに俺を見つめ……そしてクスリと笑った。
「でも……僕は変わらないよ?ルークの望む未来のために……人間を殺し続ける。繰り返し繰り返し、何度も何度でも……生きている限りずっと、ずっとずっとずーっと人間を殺してやるのさ!!」
そう言ってノヴァは空を仰ぎ……ケラケラと狂ったように笑った。
どこかから聞こえてくる誰かの悲鳴と、ノヴァの甲高い笑い声が混じり合う。
その次の瞬間……肉を貫く鈍い音が辺りに響いた。