ぼくと世界とキミ
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薄暗い広いだけの部屋の中、そっと窓から空を見上げた。
空には美しい満月が悲しく揺らいでいる。
「子供なんて拾ってきて……どうするつもり?」
後ろから聞こえたその声に振り向く事はせず、月を見つめたままクスリと自嘲気味に笑って答える。
「ただの気の迷いだ」
そう言って部屋の中央に置かれている虚しい王座に座ると、そっと《彼女》を見つめた。
緑の長い髪を結った彼女は、赤い瞳を闇に妖しく光らせ俺を見つめている。
「……寝たわ。怪我もしていたし……だいぶ疲れていたみたい」
「そうか。すまなかったな」
そう小さく返すと、次の瞬間……そっと彼女は俺を抱き締めた。
「優しい、優しいルーク。だから……可哀相ね。その優しさが……いつも貴方を傷付けるのに」
彼女はそう言うと赤い瞳を悲しそうに揺らし、ギュッと俺を強く抱き締める。
その彼女の耳に光る赤いピアスに、小さく胸が痛んだ様な気がした。
「……そんな感情……遠い昔に忘れてしまったよ」
そう小さく呟いてクスリと嘲笑を浮かべると、彼女は更に強く俺を抱き締め……それから微かに細い体を震わせていた。