ぼくと世界とキミ
第二十八話 秘策
そっと目を開くと、淡い光を放つ月が見えた。
それはユラユラと切なく揺らぎ、静かに俺を照らしている。
体中が痛く重たい上に、上手く動かせない。
そんな困難な状況の中、薄暗い部屋を見渡した。
するとそこは見慣れた光景で、どうやら俺はジルの用意してくれた自分の部屋のベッドの上に寝転んでいるらしい。
……そっか……俺。
「……っ!!」
ベッドから体を起こそうとした瞬間、左肩と腹部に激痛が走り、そのまま力無くベッドに倒れ込む。
……あの後、どうなったのだろうか。
……ノヴァは……それにフリーディアは。
あんな状況でのんきに気を失ってしまった自分の不甲斐なさに小さく舌打ちをしたその瞬間、ガチャリと部屋の扉が開かれた。
静かにゆっくりと開かれたその扉の先から、一人の青年が姿を現す。
するとベッドで首だけ上げて青年を見つめている俺に気付くと、驚いた様に目を丸くした。
「ロイ!!起きたのか!?」
そう言ってジルは驚いた様な顔をして、しかし次の瞬間……気まずそうに俯いてしまった。
それからジルは何も話し出さないまま、扉の前に突っ立っている。
……どうやら俺の腹に剣をブッ刺した事を気に病んでいるらしい。
以外に繊細な彼の態度に小さく笑みを浮かべると、彼に向かってそっと手を伸ばした。
「なぁ……ちょっと起こしてくれない?一人じゃ起き上がれなくてさ」
そう言ってヘラヘラと笑いながら手を伸ばすと、ジルは俯く顔を上げ眉を顰めると、ハァとお得意のため息を吐く。
そのままジルはベッドまでツカツカと歩いて来ると、俺の手をペンと叩いて返した。
「まだ起きない方がいい。かなりの怪我だったんだ。お前でなければ……死んでいた」
ジルはそう言うとベッドの傍に置いてあった椅子に腰かける。
そんな彼の姿を横目に叩かれた手をそっと布団に戻すと、窺う様に彼を見つめた。