ぼくと世界とキミ

「俺は戦わない!!」

「……はぁ?」

自信満々の俺の言葉に、ジルは気の抜けた声を漏らし眉を吊り上げて見せる。

「これからセレリアを取り戻す。でも俺は戦わない!!」

そう言ってチラッとジルを見ると、ジルは俺の言っている意味が理解出来ない様で、困惑した様に蒼い瞳を揺らしていた。

「試してみたい事があるんだ。上手くいけば誰も傷付かずに……セレリアも、兵士も奪えちゃう最高の作戦がさ?」

ニヤリと笑ってジルを手招いて見せると、ジルは俺の口元にそっと耳を寄せた。

誰が聞いている訳でもないのに、コソコソとジルにその作戦を伝える。

ジルは俺の口にした作戦に驚いた様な顔をしたが、暫く考え込むと……小さく頷いて返してくれた。

「……お前らしいな」

そう言ってジルが久しぶりに、お得意の不敵な笑みを浮かべる。

「だが、そう上手くいくとも思えない。もしも失敗した時は……」

「その時は任せる。今度は……迷わないから」

ジルの言葉を遮ってそう答えると、ジルは深く頷いて返した。

窓から外を見ると、いつの間にか雨は止んでいた。

……きっと成功させて見せる。

空に輝く美しい月を見ながら……そっと心の中で誓った。
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