ぼくと世界とキミ
*
「これ……どういうつもりだと思う?」
「……さあね」
ノヴァが手にした紙切れをヒラヒラと振って見せると、それにフィロが短く答え小さくため息を吐いた。
セレリア城の頂上に立つ二人の目の前には、グレノア軍が《世界樹》に向けて進んで行く光景が広がっている。
二週間前にグレノア城へと届いた手紙。
ノヴァの持つその手紙には、読むのも困難な汚いミミズ文字が書かれていた。
《二週間後、セレリアを奪還しに行く!!グレノア兵全員連れて待ってろよ!!ノヴァと魔物はお断り!!ロイ・セレリア》
書き殴られた汚い文字と、全く似ていない似顔絵付き。
「……何するつもりなのかな。わざわざ使者を使って予告状送って来るなんて」
そう言ってノヴァは訝しげに眉を顰める。
「ルークはロイの手紙の通りに、ほとんど兵士出しちゃうしさ!?まぁ……人間なんかいらないし丁度いいんだけど。でも……僕達には行くなって。ルークが何を考えてるのか分らなくなってきたよ」
ノヴァのその言葉にフィロはクスリと自嘲気味に笑うと、小さく口を開いた。
「ルークは勇者に会いたいのかもね。……生きていればの話だけど」
「……はぁ」
フィロのその答えにノヴァが小さく溜息を付いて空を見上げると……さっきまで晴れていた空が、また黒い雲に覆われていくのが見えた。