ぼくと世界とキミ
「……なぜ……俺が勇者だと思うんだ?」
微かに震えるその問いに、青年は嘲笑を浮かべる。
……今、俺が生きている事を誰かに知られる訳にはいかない。
グレノアはセレリア王家を根絶やしにしたと思っている。
もちろん俺が生きている事も知らないはず。
……それなのに……どうして。
「その翡翠の瞳が、何よりの証拠だろう?」
そう言って青年が面白そうにクスクスと笑った。
「翡翠の瞳の人なんて世界には沢山居るじゃないか!!」
声を荒げ男に鋭い視線を返すと、男は困った様に眉を顰めて見せる。
「《証》なら……そこにあるのでは?」
その言葉と共に青年の視線が、服で隠れている筈の『痣』へと向けられた。
「……っ!」
小さく声を漏らし、男から離れる様に一歩後ずさる。
……なぜ、俺の痣の場所まで分かったのだろうか。
……グレノアの者なのか。
様々な考えが瞬く間に頭に浮かんでは消えていく。
「……アンタは何者なんだ!!」
その叫ぶ様な俺の問いに、青年は妖しい笑みを浮かべる。