ぼくと世界とキミ
『ロイ様!!私はロイ様を信じます!!』
突然聞こえたその声に、ハッと顔を上げる。
キョロキョロと辺りを見回し、その声の主の姿を確かめると……それはかつてセレリアの城を守っていた兵士だった。
幼い頃から知っているその顔に、思わず遠い昔の記憶が頭を過り、それは俺の胸を苦しくさせる。
『我らも共に!!』
『ロイ様!!』
その彼に続く様に、また他のセレリア兵士達は口々に声を上げ、胸元に手を当て、俺に忠誠の誓いを立てた。
あの悲惨なセレリア城から生き残った兵士達は捕らえられ、セレリアに生きる全ての国民達の命を人質に、グレノアの兵士として戦わされていた。
そんな彼等はセレリアを守れなかったこの俺を……もう一度信じると言っている。
『勇者様!!』
『我らも!!』
次々に兵士達が叫び、兵士達はトンと握り締めた拳を胸に当てる。
『勇者様と共に!!』
『ロイ様!!』
兵士達の叫びはいつの間にか、周囲を埋め尽くすグレノア軍全体から聞こえてきた。
どうやら皮肉たっぷりなジル命名の《激甘砂糖菓子大作戦》は大成功の様だ。
そっと後ろを振り返るとジルが不敵な笑みを浮かべているかと思えば、セリアとアシュリーが嬉しそうに手を取り合いながら飛び跳ねていた。
そっと前を向き直れば、目の前には勇者を称える兵士達の姿が広がっている。
「……はぁ」
小さく安堵の息を吐き空を見上げると、いつの間にか雨は止み……太陽が燦々と輝いていた。