ぼくと世界とキミ

そっと城門から中庭に入ると、城へと向かう石畳の道の遥か彼方に……懐かしい姿を見つけた。

それは今では遥か昔に感じ、そして今でも決して忘れる事の出来ない悲しい記憶を呼び覚ます。

その悲しい光景を茫然と見つめたまま、抉られる様に胸が痛んだ。

中庭の中央に、かつて俺を助けてくれたあの兵士の……無残な遺体があった。

半年以上もの時が過ぎ、雨や風に晒された兵士の遺体は朽ち果て、殆ど原型を留めていない。

そしてその兵士の遺体に寄り添う様に倒れている、大きな塊を見つめる。

「……戻って……きてたんだ」

それは俺をあの村まで送ってくれた……美しい白い馬。

俺をあの村まで送った後、すぐにここに引き返してきたらしい。

彼の大切な……《相棒》

「……ありがとう」

小さく礼を言って微かに残る鬣(たてがみ)をそっと撫でると、兵士達に遺体と一緒に埋める様に頼み……奥へと進んだ。
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