ぼくと世界とキミ

城内も過去の記憶と変わる事無く、無残な残骸が残され朽ちていた。

兵士達は残酷な光景に悲しそうに瞳を揺らしながら、もう決して笑い合う事も無いかつての仲間達を運んで行く。

忙しそうに兵士達が動くその中を、二階に続く階段へと向かってゆっくりと進む。

一段、一段、記憶を呼び起こす様に階段を上り二階に出ると、褐色の長い廊下を真っ直ぐに進み……目的の部屋に着いた。

……二人をあのままにしておけない。

そう心の中で小さく呟くと、開かれたままだった扉を抜け、そっと部屋に足を踏み入れた。

……割れている窓。

……黒く変色したカーテン。

あの日から少しだけ変化した光景。

遠い記憶を確かめるように部屋を見渡し、それから小さく息を吸うと、そっと二人の倒れている場所へと視線を移した。

しかし……そこに二人の姿は無い。

確かに二人が倒れていたはず場所には、黒く変色した血の跡だけが残っているが……そこに二人の姿は無かった。
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