ぼくと世界とキミ

「俺はウサギだって食うし、人間も食う。それはお互い様だろ?それなのに人間ときたら、俺達魔物は人間の敵だーって目の敵にして……魔物を見かけると何もしてなくても殺す」

男の赤い瞳が窺うように僕を見つめる。

「俺達魔族は無駄な殺しは絶対にしない」

それにコクリと小さく頷いて答える。

「だから俺は人間が嫌いだ」

そう男が短く続けた。

「だからお前も嫌い。……消えろ」

男はそれだけ言うと優雅に美しい銀色の尻尾を翻し、森の奥へと消えて行った。
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