ぼくと世界とキミ
「私が一番目立たなくては嫌なんです!!」
手ぶらのまま森を出てトボトボと城に戻ると、広間の中から母の耳障りな金切り声が聞こえた。
そっと扉の隙間から部屋の中を窺うと、どうやら近々開かれる母の誕生会の服装で揉めている様だった。
母は苛立ったように腕を組み、眉をこれでもかと吊り上げて不機嫌そうに父を睨んでいる。
「わ、分かったよ。すぐに新しいドレスを用意させよう……だからそんなに怒らないでくれ」
ヒステリックに叫ぶ母を落ち着かせようと、父がヘラヘラと笑って懸命にご機嫌を伺っている。
……プライドが高く、強欲な母。
……気が弱く、いつも母の言いなりな父。
残念な事に……これが僕の両親だ。
グッと拳を握り締めると、その場から逃げる様に……早足に自分の部屋へと向かった。