ぼくと世界とキミ

「私が一番目立たなくては嫌なんです!!」

手ぶらのまま森を出てトボトボと城に戻ると、広間の中から母の耳障りな金切り声が聞こえた。

そっと扉の隙間から部屋の中を窺うと、どうやら近々開かれる母の誕生会の服装で揉めている様だった。

母は苛立ったように腕を組み、眉をこれでもかと吊り上げて不機嫌そうに父を睨んでいる。

「わ、分かったよ。すぐに新しいドレスを用意させよう……だからそんなに怒らないでくれ」

ヒステリックに叫ぶ母を落ち着かせようと、父がヘラヘラと笑って懸命にご機嫌を伺っている。

……プライドが高く、強欲な母。

……気が弱く、いつも母の言いなりな父。

残念な事に……これが僕の両親だ。

グッと拳を握り締めると、その場から逃げる様に……早足に自分の部屋へと向かった。
< 267 / 347 >

この作品をシェア

pagetop