ぼくと世界とキミ
「……やめて……ルーク……お願い」
消え入りそうな声で母が懇願する。
その瞳は恐怖で見開かれ、ボロボロと溢れる様に涙が流れていた。
しかしそれを無視してニッコリと笑みを浮かべて見せると、母の顔には絶望と恐怖が浮かんだ。
「さようなら……母様」
そう小さく別れを告げると、母の体に剣を突き刺した。
「……どう……して」
母は擦れる声で呟くと、地面に静かに崩れ落ちる。
母の体から夥しい血が溢れ出し、床に敷かれている深紅の絨毯を更に赤く染め上げた。
「さて……次は貴方の番だ」
そう言って部屋の隅で怯える様に小さくなっている父に視線を向ける。
「……頼む……助けてくれ。お願いだ……ルーク」
母の血が滴る剣を片手にゆっくりと父に向かって歩いて行くと、父はまるで駄々をこねる子供の様にブンブンと千切れるほどに首を横に振った。
「……頼む!!嫌だ!!死にたくない!!」
次第に近付く僕に怯える様に父は小さく丸まると、頭を抱えたままガタガタと体を震わせた。
その弱い父の耳元にそっと唇を寄せると、父はビクリと身を強張らせる。
「僕が王になるにはまだ早い。せいぜい、死に怯えながら生きるがいい」
そっと耳元でそう呟くと、狂った様に泣き叫ぶ父を置いて部屋から出た。