ぼくと世界とキミ
そのまま城を出てアッシュの村に行くと……そこにはフィロが居た。
彼女の住んでいた村は、今は無残な焼け跡しか残っていない。
……彼女は全てを失った。
帰れる家も……大切な人も。
「……フィロ」
後ろからそっと声を掛けると、フィロは静かに僕を振り向く。
振り向いたフィロは僕の姿を見ると、綺麗な顔を悲しそうに歪めた。
……僕の服が血だらけだったから。
血に濡れた僕の姿をフィロは苦しそうに見つめたまま、唇を噛み締めた。
「いいんだ……僕が決めた事だから」
そう言ってフィロに笑いかけると、フィロの赤い瞳から涙が零れた。
それからフィロはギュッと強く僕を抱き締める。
フィロに抱きしめられたまま、そっと辺りを見回す。
目の前には沢山の十字架が立っている。
この村に住んでいた優しい魔物達の墓。
フィロの大事な家族の……そして僕の大切なトモダチの。
僕を抱き締め泣き続けるフィロの耳には、血の様に、燃え盛る炎の様に赤いピアスが悲しく光る。
「僕が……世界を変えるから」
小さく呟き静かに目を閉じると、泣き続けるフィロをギュッと抱き締めた。
……僕は世界を変える。
……必ず。
心の中でそう呟くと、流れ続けるフィロの悲しい涙の温もりを感じたまま、遠い昔に感じる優しい彼の笑顔を思い出していた。