ぼくと世界とキミ
「何だ……あれ?」
そう小さく声を漏らし、目の前の《奇妙な塊》を見つめる。
俺達の行く道を遮る様に、白い毛玉が道を塞いでいた。
丸いボールの様な体に、フサフサの白い毛。
手足は無く、可愛らしいクリっとした瞳だけが付いている。
「もしかして……《マモン》か?」
目の前のおかしな生き物を見て、ジルが驚いた様に声を上げた。
「……まもん?」
「フリーディアでは絶滅したとされる種族だ。あのフサフサの毛が最高級の毛皮になるとされ、乱獲されたんだ。……グレノアにはまだいたのか」
三人で首を傾げてジルを見つめると、ジルはマモンをマジマジと観察しながら説明してくれた。
「可愛いね」
そう行ってセリアは優しい笑みを浮かべると、それと同じ様にアシュリーも笑みを浮かべる。
マモンは俺達の様子を窺う様に、円らな瞳を真っ直ぐに俺に向けていた。
「あれはまだ子供だな」
ジルが小さく呟いたその瞬間、マモンはぴょこぴょこと地面を飛びながら草陰に入って行った。
……確かに可愛い。
見えなくなった可愛らしい毛玉の姿を思い出し、微かに笑みを浮かべる。
それから皆とマモンの話で少し和んだ後……また黙々と森の中を進んで行った。