ぼくと世界とキミ
「マナが……近くに居る」
セリアは震える声でそう小さく呟くと、突然進行方向とは逆に向かって走り出した。
「セリア!!」
慌ててセリアを呼び止めるが、セリアは振り向く事も答える事もせずそのまま走って行ってしまう。
ジルとアシュリーも驚いた様にセリアの後ろ姿を見つめていたが、俺と目が合った瞬間立ち上がり、慌ててセリアの後を追った。
足場の悪い森の中をセリアを追って懸命に走るが、生い茂る木々のせいで視界が悪く彼女の姿を見失いそうになる。
彼女の名を呼びながら懸命に走るがそれにセリアは答えず、茂みを抜け木々を避けて走るうちに……セリアの姿を見失ってしまった。
「セリア―――!!」
息を荒げたままキョロキョロ辺りを見回し大声で呼びかけるが……返事は無い。
辺りにはジルとアシュリー、そして俺の荒い息遣いと風の音しか聞こえない。
……嫌な予感がする。
込み上げる不安を払う様に汗ばむ拳を強く握り締め、そっと空を見上げると……薄暗い空が黒い雲に覆われて行くのが見えた。