ぼくと世界とキミ

《世界の終わる時、王家に翡翠の瞳の子供が生まれる。それは女神に祝福された神の子。他王家の証を持ちし者を集め、神の力を解放し、世界を救う勇者となる》

セレスの透き通る様な声だけが、白い世界に悲しく響く。

……聞きたくない。

その先の言葉が何なのか、今の俺には分かってしまった。

グッと唇を噛み締めたまま、分かり切っているその答えを待つ。

《その勇者、神の力を持って……世界を滅ぼさんとする女神を殺し、世界を救う》

セレスのその言葉に、ジルとアシュリーがそっと俺から顔を背けた。

「これが……本当の伝説」

セレスはそう言うと、真っ直ぐに俺を見つめる。

「ジル……知ってたのか」

その俺の問いにジルは悲しそうに蒼い瞳を揺らすと、それから小さく頷いた。

「……すまない」

そのジルの答えに胸が抉られる様に痛み、どこに向けていいのかも分からないやり場のない怒りが込み上げる。

……皆は知っていた。

知っていて俺に隠していた。

真実を知れば俺は絶対に逃げ出すと、皆は分かっていたから……だから俺は何も知らされなかった。

「……ロイ……貴方は……」

「やめてくれ!!」

セレスの言葉を遮る様に声を荒げた。
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