ぼくと世界とキミ

抱えてきたリンゴを全て食べ尽くし、最初に入ってきた村の入り口まで戻ってきたその時だった。

《グルルル》と背後から何かの唸る様な低い音が聞こえ……そしてとても嫌な気配を感じた。

「……え?」

恐る恐る振り返るとそこには……奇妙な生物がいた。

獣の様な毛の生えた真っ黒い体。

大きな口から鋭く長い牙が生えていて、顔の中心にある大きな赤い一つ目が妖しく光っている。

そいつはご機嫌斜めの様で、《グルルル》と低く唸り俺達を威嚇していた。

いや……威嚇なんてもんじゃない。

あれは……俺を食い殺す気満々だ。

「……魔物じゃん!?」

そう声を上げると同時に、魔物の口に淡い光が集まり始める。

それは次第に大きな光の塊となり、目も眩む様な眩しい光を放ち出した。

「……しかも魔法系かよ!?」

腕で顔を覆ったまま、顔を青くしながら一歩後ずさる。

……魔法系は苦手だ。

魔力なんて殆ど無いのにあんなのを喰らったら死んでしまう。

……ど、ど、ど、ど、どうしよう。

そんな事を考えていると、俺の前に青年が立ちはだかった。

「バカは後ろに下がっていろ」

「バカって言うな!……って……えっ?」

青年の言葉に抗議を送った次の瞬間、青年の手にある《物体》に驚き目を見開いた。

青年の手にはいつの間にか《剣》が握られている。

蒼い不思議な光を放つ細身の長剣。

それを青年は握り締めたまま、魔物の前に立ちはだかっていた。

……一体……どこから?

さっきまでは何も持っていなかったはずだ。

……隠していた様にも思えない。
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