ぼくと世界とキミ
それは世界樹にたった一度だけ出向いた時の事だった。
天にも届く様な大きな樹……世界樹。
最も求めているモノの幻を見せると《彼》が話した伝説を思い出し、気が付けばこの地に足を運んでいた。
暫く悩んだ末にそっと手を伸ばし、世界樹の幹に手を触れる。
少し乾いたその幹の感触を感じながら暫く待って見るが……《彼》が現れる事は無かった。
……所詮は伝説。
……馬鹿馬鹿しいな。
そんな不確かなモノを信じてこんな所までノコノコと来た自分が可笑しくなり自嘲気味に笑うと、そっと幹から手を放し元来た道を歩き出す。
その時だった。
「……ルーク」
急に後ろから名前を呼ばれ、歩く足を止める。
それからゆっくりと後ろを振り返ると、そこには……不思議な少女が立っていた。
さっきまでは近くに誰の気配も感じなかった。
突然目の前に現れたその少女を見つめていると、少女は俺を見つめたまま困った様に首を傾げて見せる。
「……何者だ」
その俺の問い掛けに少女はポリポリと頭を掻くと、ヘラっと気の抜けた笑みを浮かべた。
「女神……だったりして」
「……っ」
その少女の答えと共に、急に右手の《痣》が鈍い痛みを放つ。
その痛みにあの《残酷な伝説》を思い出し、クスリと吐息を漏らす。