ぼくと世界とキミ
愚かで……美しい女。
そんな彼女に心を奪われた自分こそが……愚かかもしれない。
漆黒の闇に覆われる空を見上げたままクスクスと笑う。
「……何、笑ってるの?」
俺の後ろに立っていたノヴァはそう言って、不思議そうに俺を見つめている。
……終わりの時は近い。
「勇者を迎えに行って来い。全てを……終わらそう」
その俺の言葉にノヴァが驚いた様に目を見開き、茫然と俺を見つめていた。
……口が半開きだ。
そんなノヴァの姿を見て遠い日の幼い自分の姿を思い出しながら窓から空を見上げると、いつの間にか雨が降っている。
ポタポタと空が落とすその雫は、勇者の残酷な結末に世界の流す……涙に見えた。