ぼくと世界とキミ
第三十五話 グレノア
グレノアへと続く森の中を、三人で黙々と歩き続ける。
ポツポツと降り続ける雨の中、ぬかるむ地面を必死に歩いて行く。
「……あと……どの位?」
いつまで経っても変わらない景色にウンザリしながら、俺の前を歩くジルに問い掛ける。
「そうだな……このペースなら三日位か?」
「……三日か」
ジルの答えに小さく呟いて返すと、ジルは少し複雑そうに表情を曇らせ、また前を向いて黙々と歩いて行った。
……長い様で……短いな。
このままグレノアに向かって、運よくルークの証を手に入れたとして。
でもその先に待っているのは……
そんな事をボーっと考えていると、急にジルとアシュリーが歩く足を止めた。
立ち止まった二人は、空を見上げたまま表情を険しくする。
「……ど、どうした?」
そう言いながら二人の視線の先に目をやると、そこには魔物の背に乗り薄ら笑う少年の姿があった。
赤い右目を妖しく光らせる少年を、俺はよく知っている。
「ノヴァ!?」
馬鹿みたいに口を開きそう叫ぶと、ノヴァがストンと地面に降りて来た。
ジルとアシュリーは警戒するように表情を強張らせ、鋭い視線をノヴァに向けている。
「そんなに怖い顔しないでよ?今日は戦いに来たんじゃないよ」
そう言ってノヴァは困った様に笑って首を傾げて見せた。
そのノヴァの言葉に二人は顔を見合わせ、それから怪訝そうな顔でノヴァを見つめる。