ぼくと世界とキミ
魔物の背に乗っているとあっという間に景色は変わり、森を抜け広い草原、時々見える小さな村、それから大きな町が見えた。
栄えているが薄暗く何処か異様な雰囲気を纏った城下町の上を魔物は飛ぶと、それからyっくりとグレノア城の中庭に降り立つ。
ノヴァに促されるまま魔物から降りると、城の中へと足を踏み入れる。
キョロキョロと辺りを見回すが、城には人の気配を感じなかった。
まるでグレノアに襲われた時のセレリア城の様に、生き物の気配がまるでしない。
その異様な雰囲気に、今では遥か昔に感じるセレリアの事を思い出し、ツキンと《痣》が痛む。
ギュッと右肩を押さえたまま、薄暗く長い廊下をノヴァに連れられ進んで行く。
歩きながらそっと後ろを振り返ると、ジルとアシュリーが緊張しているのか表情を強張らせていた。
いつ襲撃されても平気なように気を張っているらしい。
そんな二人の様子を横目に、廊下の窓から空を見上げた。
いつの間にか雨は強くなり、時折光る雷が薄暗い城内を照らし出す。
それと共に小さな余震が起こる様になった。
カタカタと微かな揺れ感じながら、ギュッと強く拳を握り締める。
……時間が無い。
まるでここに俺が来る事が分かって居たかのように、俺がここに来た事で全てが進んで行くかの様に、世界が刻々と終わりへと向かっているのを感じた。
「ここだよ」
赤い大きな扉の前でノヴァが俺を振り返る。
それに小さく頷いて返すと、ノヴァがゆっくりと扉を押し開いた。