ぼくと世界とキミ
「……アンタ……本当に、何者なんだ」
その俺の呟きと同時に、魔物の口から最大の力の籠められた光が放たれた。
それは凄い速さで真っ直ぐに俺へと向かって飛んで来る。
しかし青年はとても落ち着いていて、全てを見極める様な目でその光の玉を睨んでいた。
……きっと何か策があるのだろう。
理由は分からなかったが、何故かこの青年なら何とか出来るという、おかしな思考が働いた。
……コイツなら……
そんな事を考えていたその次の瞬間、青年は鋭い視線を魔物に向ける。
そして蒼い光を放つ不思議な剣を構え、激しい轟音と共に迫ってくる光を…………避けた。
ひらりと青年は身を翻し、華麗に光の玉を避けて見せる。
「……バカァァァ!避けるなぁ!!」
そう叫び物凄い勢いで近付く光を、情けない横っ飛びでなんとか避けた。
ズザザザーッと地面を転がると同時に、激しい爆発音と衝撃波が後ろから迫った。
辺りには灰色の粉塵が舞い、何も見えない。
その中で地面に転がったまま、自分の体に手を触れて確認する。
腕……ある。
足……OK。
首……繋がってる。
怪我はどこもしていない様だ。
「……た……助かった」
安堵のため息を漏らし、それからあの憎き男の仕打ちを思い出す。
……くっそ、アイツ!!
文句の一つでも言ってやろうと、勢いよく起き上ったその時だった。
青年が魔物に向けて剣を構えたかと思ったその次の瞬間……青年は魔物の《後ろ》にいた。
「……弱いな」
青年がニヤリと笑ってそう呟き剣を振るうと同時に、耳を劈く様な恐ろしい悲鳴が辺りに響く。
「……なっ!?」
思わず声を漏らすと、真っ二つに切り裂かれた魔物から黒い光が立ち昇り……そして魔物の姿が跡形も無く消えた。