ぼくと世界とキミ
薄暗い部屋の中、雷光で照らし出される男の影が見える。
深い闇の様な漆黒の男。
かつて俺の全てを奪った者。
グレノア国王……ルーク。
「久しぶりだな。……勇者ロイ」
そう言ってルークはニヤリと笑った。
不敵な笑みを浮かべるルークの後ろに、フリーディアの上空で魔物を操っていた銀髪の女が立っているのが見える。
その女の赤い瞳は鋭く、俺を見つめたまま動かない。
……何かあれば俺を殺すつもりらしい。
女から感じる殺気を無視して、真っ直ぐにルークを見つめた。
「どういうつもりなんだ?」
その俺の問いかけに、ルークはまた不敵な笑みを浮かべる。
「世界の崩壊は近い。お前はこの《証の力》が欲しいのだろう?」
そう言ってルークはそっと右手を上げた。
そのルークの右手の甲には不思議な模様が見える。
そう……俺の右肩ととてもよく似た《痣》があった。
……選ばれし者の証。
それを見つめたまま、コクリと小さく頷いて返す。
「お前が条件を呑むと言うのなら……くれてやろう」
ルークのその言葉に、俺の後ろに立っているジルとアシュリー、それからノヴァとあの赤目の女が驚いた様に目を見開いた。
「条件……は?」
その俺の問いにルークはクスリと自嘲気味に笑って見せると、小さく口を開いた。