ぼくと世界とキミ
「一つ……グレノアの住民を全てセレリア、フリーディア、メルキアに引き取ってもらう」
「……なっ!?」
ルークの突拍子もないその答えに、そこに居た全員が驚いた様に声を上げた。
「二つ。グレノアに人間の立ち入りを一切禁止する」
ルークはざわめく周りを無視して、淡々と話を進めていく。
彼の口にした二つ目の条件に、俺は彼の考えている事が何となく分かった。
……魔物の国。
グレノア国の領土を全て魔物に譲る。
それでルークは魔物の安息の地を手に入れるつもりなのかもしれない。
そんな事を考えながら真っ直ぐにルークを見つめると、ルークはそんな俺の視線を逸らす事もせず穏やかな笑みを浮かべたまま俺の答えを待っていた。
「分かった」
真っ直ぐにルークを見つめたまま深く頷いて見せると、ルークは切なそうに瞳を揺らし、その答えに満足したのか小さく頷き俺を見つめた。
「三つ。俺と勝負しろ」
「……は?」
予想もしていなかった言葉に、ポカンと口を開けルークを見つめる。
……こんな時間の無い時に。
そんな間抜けな俺の顔を見て、ルークは可笑しそうにクスクスと笑った。
「今を逃せば、お前と戦える事はもう無いだろうからな」
「どういう意味だ?」
その俺の問いには答えず、ルークはクルっと背を向けると、そのまま扉へ向かって歩いて行く。
「外に出ろ」
それだけ言うとルークは漆黒の髪を靡かせ、薄暗い廊下へと出て行ってしまった。
その彼の後を、ノヴァと赤目の女が慌てて追っていく。
「……ロイ」
名を呼ばれそっと後ろを振り返ると、ジルとアシュリーが不安そうに俺を見つめていた。
「心配すんなって。どうせ決着はつけなきゃいけなかったんだ」
そう言ってニッコリと笑いかけると、二人は小さく頷いて……笑ってくれた。