ぼくと世界とキミ
「……俺はまだ死ねない!!」
そう叫ぶのと同時に漆黒の剣を翡翠の剣で受ける。
ガキンと金属の弾ける音と共にルークの不敵な笑みが見え、そのすぐ後に漆黒の剣が俺に向かって振るわれた。
それを避けて立ち上がると、手にした剣をルークに向かって振り払う。
それは容易く避けられるが、隙を与えずそのまま攻撃を繰り返すと、ルークは少し俺から距離を取る様にフワリと地面に着地した。
「俺はもう負けるわけには……諦めるわけにはいかないんだ!!今度こそ救って見せる!!俺は世界を救わなくちゃならない!!」
その俺の叫びに応える様に俺の体を翡翠の光が包み込んで行く。
そしてその淡い光は手にした剣へと静かに集まり、そして眩い光を放ち始めた。
「……来い。今度こそお前の本当の力……見せてもらおう」
ルークのその囁きと共に互いに走り出し、そして……剣を振るった。
その瞬間、辺りを目も眩む様な白い光が覆い、何も見えなくなる。
圧倒的な白い世界の中、どこかから吹いて来る風に……懐かしい香りを感じた。
その懐かしく感じる香りの正体は分からないまま、静かに目を閉じる。
『……強く……なったな』
そう重なる様に声が聞こえハッと後ろを振り向くと、そこには地面に蹲るルークの姿が見えた。
「……だ、大丈夫か!?」
慌てて様子を窺う様に地面に膝をつき、彼の顔を覗き込む。
渾身の力を籠めて剣を振るってしまったが、どうやらそんなに深い傷ではなさそうで……何故か少しホッと息を吐いてしまった。
両親や俺の大切なモノを奪った憎き男であるが、初めて会ったその時から、何故か言い表せない様な不思議な雰囲気を感じていた。
「愛に溺れた愚かな存在。お前も……あの女も」
ルークはそう小さく呟き悲しそうに笑うと、俯く顔を上げ俺を見つめた。
「お前は必ず女神を殺す。定められた……未来の通りに」
そう言ってルークはそっと右手を差し出す。
「触れろ」
「……ルーク」
声を震わせたまま、目の前の《痣》を見つめる。
「死に逝くお前達への弔いだ」
そう言ってルークはまた悲しそうに笑うと、真っ直ぐに俺を見つめた。