ぼくと世界とキミ
余りに一瞬の事で何が起こったのか理解できない。
ただ分かった事は……この青年は只の人間ではないという事だけだ。
青年の手からはいつの間にか剣が消えている。
……突然現れる蒼い剣。
……恐ろしいまでの強さ。
ドクドクと壊れそうな程に鼓動を速める胸をそっと押さえたまま、目の前の青年を見つめた。
青年はやれやれと少し疲れた様に肩を竦めると、静かに俺を振り返る。
「おい、行くぞ」
そう言うと青年はまるで何も無かったかの様にスタスタと歩き始めた。
「アンタ、本当に何者なんだよ!?急に剣出したかと思えば……なんか強いし」
次第に声の小さくなる俺の問いかけに、青年は小さく溜息を吐くと歩く足を止めた。
「お前は本当に……バカだな」
そう言って俺を少しだけ振り返り、呆れた様に肩を竦めて見せる。
「……はぁ!?」
青年の言葉に眉を吊り上げて見せると、青年はまた一際大きな溜息を吐いた。
その態度にまたイライラが募り、小さく舌打ちを返す。
……コイツに馬鹿にされる様な覚えは一つも無い。
「勇者は何も知らない……か」
そう言って青年は少し悲しそうに笑った。
「……へ?」
青年の呟きに声を漏らし首を傾げて見せると、青年は小さく首を横に振って見せる。
「何でもない。バカは黙ってついて来い」
そう言って青年はフッと鼻で笑うと、クルッと背を向けまた歩き出した。
……一体コイツは何を知っているのだろうか。
「だから……バカって言うな!!」
そう青年の背中に抗議すると、そのまま彼の後を追って行った。