ぼくと世界とキミ

「俺はこんな事の為に勇者になったんじゃない!大切な人を守りたくて!!もう何も失いたくなくて!!!それなのに……」

まるで駄々をこねる子供の様に叫んだ俺の頬を、静かに涙が伝っていく。

「私に世界を壊させないで!お願い!ロイ!!」

セリアの体から見る見るうちに黒い光が溢れ出していく。

……時間が無い。

しかし体が動かない。

強く剣を握り締めたまま、ただ頬を涙が伝った。

……やらなくてはならない。

……そんな事出来るわけない。

……早くしないと!!

……絶対に無理だ!!

様々な矛盾した考えが頭に浮かんでは消えていく。

それと共にセレリアの皆や、俺を助けてくれた兵士と白い馬。

それからあの村の優しい男の事や、ジルとアシュリーとの出会いや、あの森の妖精の少女の事。

今では遥か遠くに感じる様々な記憶が呼び起こされ、それは俺の心を揺さぶり続ける。

……どうしたらいい。

……どうしてこんな事に。

「本当にこれしかないのか!本当にこれしか道はなかったのか!!」

涙で曇る瞳でセリアを見つめた。

するとセリアは更に悲しそうに顔を歪め、強く唇を噛み締める。
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