ぼくと世界とキミ
「どうぞ」
そう言って使用人のメイド服の女の人に、応接室らしい広い部屋に通された。
「こちらでお待ちください」
そう言ってメイドはカップに紅茶を注ぐと、ペコリと頭を下げて静かに部屋から出て行った。
紅茶には手をつけずに、グルッと部屋の中を眺める。
赤い絨毯の敷かれた広い部屋。
そこに置かれている長方形の長いテーブルと細かい細工の入った椅子。
……三十人は座れそうだ。
美しい花瓶に活けられた色取り取りの花に多分とても高価な置物。
それから銀の食器に盛られた新鮮で甘い香りを漂わせる果物達。
そして真っ白な壁には……肖像画が三枚掛けられている。
フリーディア国王《ラインハルト・フリーディア》
……強面のオッサンだ。
俺の親父もかなりの強面のオッサンだったけど、この人はそんなのが比ではないくらいに……険しい顔をしていた。
笑っている顔が全く想像出来ない。
少し眉を顰めたまま隣に掛けられている女の人の肖像画を見つめる。
王妃《シオン・フリーディア》
上品でどこか儚い笑みを浮かべた彼女は美しい青いドレスに身を包んでいる。
……綺麗な人だな。
でもその頬笑みが少しだけ悲しそうに見えるのは……気のせいだろうか。
そんな事を考えながら最後に残った肖像画を見つめる。
そこには俺の思った通りの人物が描かれていた。
「……やっぱりな」
そう小さく呟いたその時、部屋の扉が開く音が聞こえた。