ぼくと世界とキミ
「十六年前……俺が六歳の時だったか。《神の子》が生まれたとセレリアの使者がこの城に来た。神の子は世界を救う勇者だと伝えられているが、言い換えれば世界はこれから危機に陥るという事にもなる。グレノア王は病気のために出席しなかったが、セレリア、フリーディア、メルキアの国王が集まり話し合った。まぁ、特にいい案も無く、お前は普通に……いや、かなり自由に育った様だが。その時に俺はお前に会っているんだ」
「アンタが《証を持ちし者》だから?」
「その通りだ」
俺のその問いに青年は小さく頷くと、着ていた服を捲り上げて見せた。
すると彼の左の脇腹に……《痣》があった。
それは俺の右肩についてるのとは、少し形が違う。
しかしその《痣》を見つめていると、まるで何かを訴える様に俺の《痣》が鈍い痛みを放つ。
「……伝説は……本当なのかな」
無意識に右肩を押さえたまま、一番聞きたかった質問をした。
その俺の問いに青年は首を傾げると、それから少し悲しそうに瞳を揺らした。
「……さぁな。少なくとも俺は信じていない。現にお前は国を守れずに、俺はあの村を守れなかった。目の前の人を救えずに……なぜ、世界が救える?」
青年はそう言うと、真っ直ぐに俺を見つめる。
……その通りだと思った。
俺は世界なんて救えない。
目の前の人も救えない。
……何も救えない。