ぼくと世界とキミ
「だが……これから起こる悲劇は止める事ができるかもしれない。グレノアを……ルークを止められるなら」
青年のその言葉に、そっと顔を上げる。
「……ルークを……止める?」
そう声を震わせて、歪んだ笑みを浮かべた。
……コイツは何を言っているのだろうか。
グレノアはセレリアの領地だけではなく、兵士に武器まで全てを自分の物にしてしまい、その上魔物まで操ってくる。
今ではどの国よりも大きな《力》を持っている筈だ。
……敵う筈がない。
「……ロイ。お前もそのつもりでここを目指したのではないのか?グレノアが次に狙うのはこのフリーディアだからな」
青年はそう言って俺の答えを待つように、静かに俺を見つめている。
その蒼い瞳は俺の胸をざわめかせ、そして苦しくさせた。
俺は……何のためにここに来たのだろうか。
無意識にここを目指していた。
……なぜ?
保護してもらうつもりで?
……違う。
一緒に戦うつもりで?
……違う。
……なぜ?ナゼ?
俺はなぜここに居るのだろうか。
……分らない。
強大な《何か》に操られている様な気がして……急に恐ろしくなった。
何も答えられず視線を逸らす俺を、青年はただ静かに見つめている。
「これから俺はメルキアに向かう。同盟を申し込むつもりだ。お前はどうする?」
「……俺は……」
そう小さく呟き、そして口を噤んだ。
俺にはどうすれはいいのか分らない。
俺には何の力も無い。
きっと彼の足手纏いになってしまう。
言葉を詰まらせたまま拳を強く握り締め、ただ俯く事しかできなかった。