ぼくと世界とキミ
「そんなに……自分を責めるな」
そのジルの声は……どこか優しく聞こえた。
そっと俯く顔を上げ、瞳を震わせたままジルを見つめる。
俺を見つめるジルの瞳は、決して淀んだ瞳などではなく……深い泉の様に澄んだ美しい蒼い瞳だった。
その瞳を見つめたまま……多分これが本来の優しい彼の瞳なのではないのかと思った。
「悪いがここで立ち止まっている時間は無い。……森を迂回しよう。その方が確実だ」
ジルはそう言って笑うと、馬へと向かって歩いて行く。
……きっと気を遣わせてしまったのだろう。
本当なら一刻も早くメルキアを目指したいはずだ。
……この森を突き抜けて。
ジルならそれができる。
それだけの力がある。
俺とは比較にならない程の力が。
それはジルが《証を持ちし者》だから?
それならなぜ俺は力を持たないのか。
「……力が……欲しいな」
小さく擦れた声でそう呟いたその瞬間……目を覆う程の眩い光が辺りを包んだ。