ぼくと世界とキミ
「……どうして……こんな風になっちゃったのかな」
そのセリアの小さな呟きと共に、急に吹いた強い風にセリアの長い髪が靡き……微かに甘い香りがした。
風で靡く髪に隠れ、セリアの顔は見えない。
……でも……泣いているのが分かった。
小さな肩が震えている。
そっと……セリアの手を握った。
……守りたいと思った。
なぜそう思うのかは分からない。
「俺は大切なモノを守るために……戦う」
きっと全てを救う事はできない。
でも、彼女の生きる世界だけは……どんな事をしても守りたい。
それが今の《自分》にできる……そして《自分》にしかできない事。
《グオオオ~ン!!》
ドラゴンは《泣き》続ける。
消えてしまった何よりも大切なモノ。
もう二度と会えない……愛しい存在を呼び続ける。
「……みんなが幸せになんてなれない……か」
声を震わせセリアは悲しそうに呟いた。
その姿は儚く……消えてしまいそうな気がした。
微かに唇を噛み締めたまま、ギュッと強くセリアの手を握る。
その瞬間……風が優しく吹いた。
セリアは泣き続けるドラゴンから瞳を離さないまま……そっと手を握り返してきた。
深い悲しみと二人の手の温もりだけが……確かにそこにあった。